【書評】ロングウォーク読書感想【ネタバレ有】

読んだ本について

ロングウォーク [ スティーブンキング ]

価格:1650円
(2026/7/5 22:11時点)
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タイトル:ロングウォーク(旧題「死のロングウォーク」)
出版社:扶桑社
著者:スティーブン・キング(リチャード・バックマン名義)
読了時間:約5時間25分
ページ数:463ページ
本のサイズ:A6(文庫本サイズ)
文字のサイズ:やや大きい

本の内容は?

舞台は近現代のアメリカ。
年に一回、選ばれた少年達を集めて盛大に行われる競技「ロングウォーク」が開催される。
 
ルールは主に4つ。

・歩く時は時速4マイル(時速6.4km)以上を保つ
・それを下回ったら警告を受ける
・一時間歩き続けたら警告が一つ消える
・3回警告を受けて、4回目で脱落=死

そして勝者はたった一人だけ

いたってシンプルなルールだ。

ロングウォークに選ばれた主人公の少年ギャラティを含め、合計100人の少年達が、この死のゲームに挑む。

読もうと思ったきっかけは?

「SNSで見た映画の予告映像」

2026年6月26日、この小説の映画が公開される予定で、その予告映像をX(旧ツイッター)で見かけた。
 
私はデスゲームものの話は、小説でも映像作品でもあまり触れた事がなかった。
それでもこの話が気になったのはスティーブン・キングの事実上の処女作という文言だ。
 
「デビュー作は違う作品じゃなかったか?」と思って調べてみると、スティーブン・キングの名前でのデビュー作は1974年発表の「キャリー」だが、彼は別のペンネームとして、リチャード・バックマンという名前も持っている。
旧題名「死のロングウォーク」は彼が大学生の頃に書いた本らしく、この作品が事実上の処女作品らしい。

原作小説の復刊も発表され、旧題である『死のロングウォーク』から『ロングウォーク』にタイトルを改め、5月15日(金)に扶桑社から発売されたらしく、ちょうど仕事帰りの本屋で見かけたのでこの本を手に取ってみた。

「歩くだけでどうやって話を盛り上げるの?」

この話はいわゆるデスゲームものだが、別に登場人物同士で殺し合いをする訳ではない。
肉薄したバトルが繰り広げられる訳でも、難解な謎解きもない、ただ最後の一人になるまで歩き続けるだけだ。

 この小説の厚さは、私の人差し指の第一関節くらいある。
このブログの記事一つ書き上げるだけで何日も掛かる私にとっては、とんでもない文字数だ。
障害物競争ならまだ書きやすいだろうが、ロングウォークで出てきた障害物らしいものといえば、雨と坂道くらいだろう。
ただひたすら歩くだけの描写で、どうやってこの厚さになるまで読者を飽きさせずに話を展開できるのか、疑問に思ったと同時に興味が湧いた。

読みやすさは?

「ページ数の割に読みやすい」

この話は主人公の少年の一人称視点で話が進んでいくので、小難しい言葉はあまり入っていない。
長ったらしいと感じる心理描写や情景描写もなく、ちょうどいい長さでテンポ良く話が進むので読みやすく、「気がついたらこんなにページが進んで、読み終わってた」と思える小説だった。
 
警告を受けた登場人物は兵士に番号で呼ばれるので、誰が警告を受けたのか分からなくなる時があったが、小説カバーのそで部分と、8ページの所に主要な登場人物とその番号の一覧が載っているので、すぐに見直せるのはありがたかった。

心に残った所

「デスゲームものの話だが、人間ドラマの側面が強い」

ロングウォークは最後の一人になるまで終われない。
自分が勝者になるには、周りの参加者全員が死ぬまで歩き続けないといけない。

そうなると参加者同士で蹴落とし合ったり、疲弊して脱落しそうになる参加者を早々に見捨てたりと、人間の冷たい所が現れたり、殺伐とした話になるのかと思ったが、そうでは無かった。

挑発的な態度を取る参加者がいたり、口喧嘩も発生するが、他の参加者の進行を妨げるような干渉はしてはいけないルールもあるので、参加者同士の取っ組み合いのシーンはあまり入っていない。
 
主人公の周りでは今の場所や時間を聞いたり、周りの参加者がどうなっているかの噂が回ってきたり、軽口を叩きあったり、身の上話をしたり、時に励まし合ったりもして、デスゲームの最中にも関わらず意外にも和やかだ。
このロングウォークに参加して、同じ方向に向かって共に歩き、同じ恐怖を分かち合い、言葉を交わし合ったからこそ、芽生えた友情もあったように思えた。
……若干一名、それ以外のものも芽生えているような気がしたが。
 
 
歩みを進める間に彼らがどんな人間か、何を考えているのか解像度が上がっていくので、登場人物達に愛着が湧いてくる。
その分、その愛着の湧いた登場人物が脱落した時の精神ダメージは、一際大きかった。

私は終盤に脱落したマクヴリーズと、ステビンズという登場人物が特に好きだったのだが、ギャラティが彼らの死に対して、涙すら流せなくなる程に消耗しているのも、彼らの死を嘆く為に歩みを止める事もできないのも、読んでいて辛かった。

「人の目によるほぼ強制参加」

「取り消しはできなかった。人の目があったからな。他のウォーカーもみんな同じ思いをしたんじゃないか」

p355ギャラティの台詞より引用

上記の引用は、小説の厚さが残り4分の1くらいになった辺りで、ギャラティがロングウォークの選手に選ばれた時の事を語るセリフの一部だ。

ロングウォークは選手に選ばれたとしても、事前に二つある取消日までに辞退する事ができる。
実際に辞退した選手もいて、参加者の一人のマクヴリーズは補欠上がりの参加者だった。
 
この競技は、逃げようと思えば逃げられた筈のゲームなのだ

しかし、友達も全員参加している表彰晩餐会が行われて、ギャラティは盛大に祝われるような内容があり、自分に置き換えて想像してみて正直ゾッとした。
 
この世界ではロングウォークに参加できるのは、宝くじ並みの倍率で選ばれた少年だけで、盛大に祝われる程すごい事となっている。
一緒にテストを受けた同年代の少年達からみれば、選ばれた人間は羨望の的だろう。

もし大勢の人間に囲まれて祝福ムードになっている中、「私は辞退する」とその場で全員に向かって言えるだろうか。
 
もし参加を取り消して辞退した場合、周りに失望されたり、罵られるのは想像に難くない。
何年も掛けて悪口を言われたり、嫌がらせを受けたり、母親やガールフレンドが被害を受ける可能性だってある。
それでも「辞退する」と言えるだろうか。
私は無理かもしれない。
 
大人数の人間が作り上げた空気を自分一人でぶち壊すのは、至難の業だ。
せいぜい何も言わずに、黙って笑っているくらいしかできないだろう。
  
散々持ち上げられて、その場の空気に飲まれて、引っ込みがつかなくなって、結果逃げられなくなる。
自分の意思をしっかりと持っていなくて、その場の空気を読むのが上手くて、近くに大事な人間がいる程、「これを辞退するのは無理だな」と感じた。

読む時のポイント

読んでいて、きついなと感じる描写があった

読んでいる途中で思わず、「うっ……」と顔を歪めてしまったシーンがいくつかあった。
 
脱落して銃で打たれた参加者を見て、他の参加者が嘔吐するシーン。
ロングウォーク中は自由な排泄もできないので、歩きながら排泄をしたり、下痢を起こす参加者のシーン。
ハーフトラックに足を轢かれて、もう歩けないと分かっていても、しっかり警告を告げてから脱落させるシーン。

詳細を書こうとすると、かなりグロくなってしまうので、ここでは書かないが、小説の後半に差し掛かったあたりで脱落した、ハンク・オルソンの死亡シーンも中々にきつかった。

痛々しい描写などが苦手な人は、読めるかどうか一度考えてから、この本を手に取る事をおすすめする。

距離の単位はマイルである

この話は基本ギャラティの一人称視点で話が進められていくが、ロングウォーク開始からどれくらい歩いたか、次の街まであとどれくらいの距離かという描写がしきりに書かれている。
日本では距離の単位はメートルを使っているが、この小説での距離の単位はマイルだ。
 
覚えているとイメージがしやすそうな距離をざっとまとめると、こんな感じだ。

1マイル=1.609km
15マイル=24.1402km(大阪市役所から枚方市くらい)
30マイル=48.2803km(大阪市役所から神戸市西区くらい)
50マイル=80.4672km(大阪から琵琶湖くらい)
100マイル=160.9km(大阪から愛知県くらい)

距離のイメージがしやすくなると、彼らの歩く道がどれだけ途方もない事か、これだけ沢山歩いたのに終わりがない事に彼らが何度絶望したか、ほんの少しイメージしやすくなるなるかもしれない。

今回読んだ本はこちら↓

ロングウォーク (扶桑社ミステリー キ 1-12)

 

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